未婚・少子化・セックスレス問題の研究はまだ始まったばかり

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未婚、少子化、セックスレスが先進国で共通の問題であることは今日、世界的に広く認識されつつあります。しかしこれらの問題に関する研究はその深刻さにもかかわらず、驚くほど少ないのが現状です。世界に先駆けてこれらの問題が表面化したのは1990年代後半の日本ですが、本格的な取り組みが無いまま日本の出生数は減る一方で、現在のペースで日本の出生数が減れば18年後には出生数がゼロになるでしょう(出生数のデータはこちら)。この点については今までイーロン・マスクが何度か懸念を表明していて、「日本は消滅する」とまで予言しています。出生数ゼロは国家の存亡に関わる危機的事態です。しかしこの問題に対する取り組みはゼロに等しいのが現状です。日本政府は2023年に子ども家庭庁を設置したものの、何ら取り組みが見えず、庁を解体して新生児に1千万円配った方が良いという批判もあります。しかし政府の迷走には理由があり、そもそもこの問題、まず研究者が少なく、原因の特定もできていません。「パラサイト・シングル」「婚活」といった言葉を作った山田昌弘の専門は家族問題であり、少子化や未婚を専門にしているわけではありません。特にセックスレスに関しては研究者の数がほぼゼロに近い状態です。

 

 

これら問題の現状を理解するために、まず欧米人がこれらの問題に気が付いた経緯を解説します。欧米人は当初、日本のセックスレス問題を日本だけの特殊な問題として認識していました。欧米人は日本人に対して変態オタクのイメージがあり、このセックスレス問題も日本人の変態志向と結びつけていました。こちらは2013年のイギリスBBCの取材ですが、タイトルが欧米人のスタンスを表しています。

そんな中、同じく2013年に発表されたイギリス、ザ・ガーディアン紙の記事が論争を巻き起こしました。

それまで通り「日本人は変態だ」で片づけようとするこの記事に対し、「その通りだ」「いやそうではない」の議論が起きたのです。

”これは海外の編集者が大喜びする奇妙で変わった日本というお話 の典型だ” ”日本の人口問題は研究するに値する”

『セックスレスで日本絶滅は真っ赤な嘘』ブルームバーグ 

そしてこの論争を決着させたのが、その翌年の2014年に発生したアイラビスタ銃乱射事件です。カリフォルニア在住の22歳、白人アジアハーフのエリオット・ロジャーは自分が女性に相手にされないことを社会の責任として復讐を計画し、長大な声明文とビデオ告白を作成した後に6人を無差別殺害して自殺しました。

 

この事件は未婚・セックスレス問題を日本だけの問題として笑っていたアメリカ人に強い衝撃を与え、インセル(非モテ)の存在を全米に知らしめるとともに、インセル問題が他人事ではなくアメリカ人自身の問題であると認識させる結果となりました。そしてこの問題に関心を持ったアトランティック誌(アメリカで160年の歴史を持つ)の上級編集者、ケイト・ジュリアン女史は独自に取材を始め、その結果を記事にしました。この記事は大手メディアに一斉に取り上げられ、「セックス不況」と言う言葉が定着させる結果にもなりました。39ページに及ぶ長いこの記事の中で筆者は取材の過程で聞いたセックスレスの原因をひとつひとつ紹介しています。

”性研究者、心理学者、経済学者、社会学者、セラピスト、性教育者、そして若者たちと多くの会話をする中で、私が「セックス不況」と呼ぶようになったものについて、様々な説を耳にしました。ナンパカルチャー、圧倒的な経済的プレッシャー、不安率の急上昇、精神的脆弱性、抗うつ薬の蔓延、ストリーミングテレビ、プラスチックから漏れ出す環境性エストロゲン、テストステロン値の低下、デジタルポルノ、バイブレーター、出会い系アプリ、選択過多、ヘリコプターペアレント(甘やかし)、キャリア主義、スマートフォン、ニュースサイクル、情報過多、睡眠不足、肥満などが原因かもしれないと言われました。現代の汚点を一つ挙げれば、どこかの誰かが、それをセックスレスと結びつけるでしょう。"

『なぜ若者のセックスはこんなにも少ないのか?』2018年、アトランティック

https://www.scribd.com/document/730461152/Young-People-Are-Having-Less-Sex-The-Atlantic (全文はこちら)

 

このケイト・ジュリアン女史のきっかけとして原因の追究が始まりましたが、今のところ決定的な結論は出ていません。そして同じく2018年、日本でも問題解決の動きがあったのですが、日本の問題解決は原因の究明ではなく、資本主義的なアプローチでした。セックスレスで悩む女性のために女性向け風俗が登場したのです。それまでも女性向けの性的なサービスは細々と存在してはいたものの(出張ホスト)、出張ホストが提供するサービスはあくまでもデートであって、性的な満足が確約されていたわけではありませんでした。しかし新しく登場した女性向け風俗は女性の性的満足をサービスの中心として打ち出したのです。性的満足を提供する以上、「セラピスト」と呼ばれる男性たちは仕事を始める前に徹底的なベッドテクニックの研修を受けなければなりません。この事前研修こそが、それまでの出張ホストと決定的に違う点です。女性向け風俗はビジネス界の隠れた大ヒットとなり、短期間で大儲けをした創業者は2024年に3億円の脱税で逮捕されました。

さて、以上が未婚・少子化・セックスレス問題についての日本とアメリカの状況です。日本では世界に先駆けてこれらの問題が浮上したにも関わらず、研究者の存在はゼロに等しく、原因の究明はなく、当然、解決策も定まっていません。日本に遅れてこれらの問題を認識したアメリカでも状況に大きな違いはないと思われます。

 

 

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