未婚少子化の根本原因は女性の幸福追求と35歳の壁

 

未婚・少子化・セックスレス問題の根本的な原因について、研究者による統一的な見解が存在しないことは前回話しました。しかし人間の幸福を愛に求めるユートピア思想にとって、これらの問題は最優先で解決すべき課題です。これら問題のうち、未婚と少子化についてその根本原因をまとめます。未婚と少子化の根本原因はテクノロジーの発達と都市化を背景とした女性の優位性です。

結婚の起源

およそ150年前まで、女性にとって結婚は生きる手段であり、結婚をしないという選択肢は存在しませんでした。そもそも結婚という制度がどこから始まったのかと言えば、農業の開始と財産の蓄積です。狩猟採集の時代は財産が存在しませんでした。動物を狩って植物や果実を採取する生活は常に移動する生活であり、財産を持つことはできなかったのです。しかし農業の開始ともに財産の蓄積が可能になりました。農業をするということは、一定の土地に定住するということであり、その土地に投資をするということです。森の木を切り、石を取り除き、水路を作る。そうして作った農地は財産であり、また定住によって穀物、道具、家畜などを増やすことが可能になりました。すると今度は自分で切り開き、蓄積した財産を守る必要が生じます。中世の争いは土地の支配権をめぐる争いであり、それはもっぱら男の仕事でした。槍や刀を使う争いにおいて、女性の出番はなかったのです。そしてそのため、農地及び蓄積した財産は男性の所有物となりました。すると次の問題は財産の相続です。男性は自分の財産を自分の子供に譲りたい。しかしDNA検査などなかった時代に子供の父親を知っているのは女性だけでした。そこで結婚という制度が生まれたのです。平安貴族やモソ族の男性など、子供の養育に関わらない男性は女性が誰と寝ても気にしません。しかし財産を持ち、子供の養育にも関わる男性は女性が浮気をして別の男の子供を妊娠することを許しません。女性の貞操観念はここから生まれました。土地を開発し、守り、所有していたの男性だったので、女性は男性と結婚することでのみ土地と財産にアクセスすることができました。だから中世の女性にとって結婚しないという選択肢は存在しなかったのです。

女性の自立

しかしテクノロジーの発達が女性の生き方に革命を起こしました。まずハーバー・ボッシュ法によって、農業生産量が爆発的に増大しました。そして鉄道や自動車の発達によって、食料を田舎から都市部に運ぶことが可能になりました。また冷蔵庫の発明によって都会に食料を保存することも可能になりました。農業をするということは人が土地に縛られるということでもあります。しかしこれらテクノロジーの発達により、人は土地の束縛から解放され、都市に住むことが可能になりました。そして産業の高度化によって都市に仕事が増え、女性は都市で職を得ることも可能になりました。土地に束縛された中世の女性にとっては結婚こそが生きる手段でしたが、現代の女性は都市に住んで職を得て、結婚をしないでも生きるという選択肢があります。およそ150年前まで、先進国では人口の9割が農村部で暮らしていましたが、この150年でその比率は逆転し、現在では人口の9割が都市部に暮らしています。都市化と女性の権利拡大は密接な関係があります。女性の権利を拡大した最大の要素はフェミニズム運動ではなくテクノロジーの進化でした。

結婚目的の変化と35歳の壁

女性の生き方が変わったことにより、女性にとっての結婚の目的も変わりました。動機の強さも変わり、満足のレベルも変わりました。また、配偶者を選ぶ上での選択権も男性から女性に移りました。女性が自立した今、もはや女性にとっての結婚の目的は生存欲求に基づいたものではありません。より質の高い人生、すなわち幸福が目的です。これは一見すると理想的な変化ですが問題も含んでいます。それは幸福の基準が人によって違うということです。ある女性は経済的に豊かな生活を幸福と考えるかもしれません。別の女性は男性からの愛情こそ幸福と考えるかもしれません。経済的な豊かさにしても、どの程度の豊かさを求めるのが妥当か。そして実際のところ、ほとんどの女性は自分が何を求めているのかを把握していません。そしてその状態のまま恋愛市場に参入します。地図を持たずに旅に出るようなものです。しかし女性には35歳の壁があります。35歳の壁とは女性は35歳から40歳にかけて女性ホルモンが半減することで、そのため女性は35歳を超えた時点から妊娠が難しくなります。統計的にも女性は35歳を超えたところから成婚率が下がります。この35歳の壁を少子化の点から考えると、女性が35歳までに2人の子供を産むためには32歳までに結婚している必要があります。女性が恋愛を始める年齢が16歳とすると、32歳までには16年です。女性はこの16年間で自分を幸福にしてくれる男性を見つけなければ子供は作れません。しかしそれは誰にでもできることではなく、誰にでもできないから未婚少子化の流れが止まらないのです。

女性の上昇志向

「上昇婚」という言葉があります。一般的に女性は自分よりも家柄、学歴、年収などの面で上位クラスの男性と結婚したがる傾向です。この女性の上昇志向はとても強く、自分より下のクラスの男性と結婚するくらいなら結婚しない方がましと判断しがちです。一般的に人は自分を高く評価します。たとえばドライバーの8割は自分は運転が上手だと考えています。また頭の悪い人ほど自分を高く評価するダニング=クルーガー効果もあります。男も女も自分を高く評価する傾向がありますが、こと恋愛においては女性の方が自己評価が高くなりがちです。あるマッチング・アプリ会社の調査によれば、男性は女性の見た目を客観的に正しく評価するのに対し、女性は男性の約80%を「平均以下の見た目」と評価したそうです。30歳未婚女性が結婚相手に望む年収は5~600万円ほどです。しかし同じ年齢層の未婚男性でその年収がある人は全体の6~8%ほどです。私は自己評価の高さを脳のバグだとは考えません。高望みは言葉を換えれば向上心です。女性も男性も最初は高望みで良いのです。最初は高望みでもいくつかの恋愛経験を経て軌道を修正し、最後は自分と同格の異性を見つけるのが自然な恋愛の形です。問題は女性の場合、この修正が難しいことです。なぜなら恋愛市場では女性の立場が強く、女性は恋愛をすればするほど高望みが強化されてしまうからです。

軌道修正の難しさ

女性はマッチング・アプリで多数の男性からアプローチを受けます。ある調査では女性の54%が受信メッセージ数に圧倒されたことがあるとのこと。逆に男性の64%がメッセージ不足で自信を失ったことがあるとのことです。このため、マッチング・アプリ上での女性の高望みはしばらく続きます。また、デートや恋愛でも女性の高望み続きます。なぜならば女性が上方と同格の男性だけと恋愛するのに対し、男性は上方、同格、下方と、全方向の女性と恋愛できるからです。恋愛強者の男性を「アルファ男性」と呼びます。アルファ男性が50人に一人なら上位2%です。女性の高望みについて、このアルファ男性の行動は問題です。なぜなら彼らは女性に「かなわない夢」を与えてしまうからです。アルファ男性が上位女性とだけ恋愛するということはなく、むしろアルファ男性は恋愛期間中はわがままな上位女性を避けます。そして多数の女性と気軽な恋愛を楽しみます。私はこれを「時間差一夫多妻」と呼びますが、この時間差一夫多妻は4人や5人にとどまりません。ある調査によれば上位1%の男性は生涯に100人以上の女性と交際しているそうです。つまりたった1人のアルファ男性のせいで100人の女性が高望みの修正に失敗している可能性があるのです。女性には35歳の壁があります。そして地図を持たずに旅に出た女性の多くが軌道修正に失敗し、ゲームオーバーになっているのが実情です。

男性側の問題

さて、ここまで女性にとっての婚活の難しさを解説しました。では男性の方はどうなのかといえば、女性が不幸な結婚を拒否するのに対し、男性は結婚できない状況を拒否します。自分は恋愛カーストの下層だと認識した男性たちは恋愛の競争で自尊心が傷つくことを恐れ、早い段階で結婚をあきらめます。そしてアニメやゲームにのめりこみます。彼らはいわゆる弱者男性ですが、本当に弱者かどうかはわかりません。というのも、彼らのすべてではありませんが、ある一定の割合で、時代の変化を拒否している層が存在するからです。アフガニスタンや中東諸国を見れば分かるように、女性が一人で生きられない世界では結婚相手の選択権は男性の側にあります。しかし女性が一人で生きられる西欧社会では女性の側に選択権があります。彼らはこうした時代の変化が許せないのです。彼らは1990年代には数多く存在しました。しかし結婚できずに独身中年となり、その多くが姿を消しました。今はむしろ女性の強さに怯えている男性が増えている印象です。ただ、彼らの側に問題があったとしても、彼らが未婚少子化問題の原因かというとそれは違うと思います。今は一般社会はともかく、恋愛市場では男性よりも女性の方に力がある時代です。責任の所在は力の弱い側よりも強い側にあるのが普通です。しかしそもそも、結婚という制度の根拠は農業のために土地を守ることであり、土地を守る男が自分の子供を確定することでした。人口の9割が都市部に住み、DNA検査で子供の父親が誰かを誰でも特定できるようになった今、結婚という制度の根拠がもはや存在しません。未婚問題にせよ少子化問題にせよ、まず結婚という制度を根本から見直し、あらたなコンセプトの男女関係を考えるところに来ていると私は考えます。

 

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